一匹少女が落ちるまで








「紫月!」


理央のうちを出て車に乗り込もうとした時、名前を呼ぶ声がして振り返る。



「…理央」



「…ごめん、わざわざ。紫月のお父さんやお母さんまで…」



「いいのよ。お父さんが突然車出したし、理央のお父さんと知り合いみたいだったし」



「…あぁ。父さん昔、よく話してたんだ。学生の頃、ヤスと全国大会に行ったって。紫月のお父さんのことだったんだな」


理央はそう言って、運転席に座るお父さんに気づいてから頭を下げた。



「…理央くん、いつも娘がお世話になってるね。ありがとう」


運転席のガラス窓を開けると、お父さんは理央に頭をあげるように言ってから、話した。



「いえ…お世話になってるのはいつも俺の方で…今日は本当に…ありがとうございました。なんか、紫月にはいつも助けてもらってばかりで…すみません」


「謝らないでよ。人って、誰かのこと助けた時が1番満足感に浸れるんだよ。助けられたと思ってる側よりも案外助けた人の方がいい気持ちだよ。のぼ…お父さん、あんな風に言ってるけど、不器用で上手に伝えられないだけだから、わかってあげてね」



「…は、はあ」


「じゃ、また」


お父さんはそう手を振ると、私に車に乗るように言った。



「…じゃあ、また学校でな、紫月」


「うん。突然お邪魔して悪かったって理央のお母さんも伝えて。また学校で」



私たちはそう言って手を振りあってから別れた。





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