一匹少女が落ちるまで
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「早くしてよ!もっと飛ばして!」
「…申し訳ございません、お嬢様。しかし、あと30分はかかるかと」
「はぁー?何それ!!あと40分で飛ぶのよ!急いで!」
玲奈の運転手は泣きそうな顔でハンドルを握る。
こちらこそ本当に申し訳無いのだが、正直急いでほしいと思ってるのは事実だ。
『…理央さ、アメリカに行くんだって』
俯きながら、山岡くんはさっきそう言った。
『今日が出発の日で、もしみんなに会ってしまったら離れられなくなるから言わないで行くって決めたみたい。…特に雨宮に』
山岡くんのセリフが何度も頭でリピートされてそのたんびに目頭が熱くなる。
私は、玲奈の提案で急いで玲奈の送迎車で空港に向かうことにした。
どうして理央の言葉が嘘だって、気付かなかったんだろう。
理央の嘘も赤羽くんの嘘も。
気づかなかった自分に腹が立つ。
1番気づかなきゃいけないことだったのに。
『すこし前に親父さんが海外にも事務所を立ち上げたみたいで、それでその事務所拡張も兼ねて新しい環境で家族で1からやり直そうって』
このまま遠くに行っちゃうなんて、絶対にありえない。
絶対にダメ。
「…理央」
どうしてアメリカなんか…。
まだ、昨日の電話の続きを聞けていないし、
理央にちゃんとお礼だって言えていないのに。
理央のおかげで、楽しい思い出が作れそうなのに、あなたがいないなんて考えられない。
思い出すのは、肩に置かれた理央の頭の重みとか、修学旅行での理央のタオルの匂いとか、手の温もりとか。
私の中でこんなに大きくなっていたなんて。
ちゃんと、まだちゃんと伝えられてないのに。