一匹少女が落ちるまで
好き
【side 理央】


後悔はなかった。


俺みたいなお人好し人間は、行ってらっしゃいなんて言われると、寂しくなって行くのを躊躇いそうになるから。



これでよかったんだ。



そして、搭乗アナウンスが流れて、搭乗口に向かった時だった。



黒髪の胸まである長い髪の女の子が「理央」
と名前を呼んでいたのを見つけたのは。



まさかここに紫月がいるなんて思っても見なくて。


声をかけると顔を上げた彼女は、メガネを片手に持って泣いていたんだ。



「…紫月、どうしてここに」



「…理央っ!」



────ギュッ



突然のことで何が起こってるのか全然わからなくて。



だけど、今俺にしっかり抱きついて離れないのは紛れもない紫月なのは確かで。



「…紫月」


彼女が今俺を抱きしめている理由に、恋愛対象とかそういうものを求めるつもりなんてないのだけれど、

彼女にとってこれが単なる友情でも、すごく嬉しくて、ニヤけてしまう。



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