一匹少女が落ちるまで


花道の後、みんなで写真を撮ったり、今までお世話になった先生と話したりする。


一年前の私には考えられないことが、目の前で起こっていて、信じられなくて嬉しい。



「新山、卒業おめでとう」


「…ありがと…ございます」


少し離れたとこで去年担任だった伊達先生と心が話してるのが見えた。



いつか、心は「伊達先生のこと好きかも」なんて言い出して、私と玲奈を驚かせたっけ。


心がどうして伊達先生を好きになったのか、未だに謎だけど…。



あんなに頬をピンク色に染めてちゃ、伊達先生にも絶対にバレていると思う。



伊達先生が、心の頭に落ちた紙吹雪をとってあげて、心がまた顔を赤くする。



2人のすぐ近くでは、玲奈と山岡くんが痴話喧嘩をしている。


内容はきっと、しょうもないこと。


それでもやっぱり、近くに好きな人がいる2人を見ていると羨ましくなる。



理央…。


彼を空港で見送ったあの日から、忘れたことなんて一度もない。


行事のたびに、理央もいたらって考える自分がいて、2人見るたびに羨ましくなる自分が嫌になる。



理央は登さんの仕事の手伝いで忙しそうで、最近は全然連絡を取ることもなくなったし。


理央との前のメッセージを見返して、重たいため息をつく毎日だった。



会いたい


会いたい


会いたい



それだけでいつもいっぱいで。





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