一匹少女が落ちるまで
ありえない。
記憶を思い出すを通り越して、幻聴が聞こえるくらいになってしまったか。
そう思って、バチっと目を開く。
「…隣、座っていい?」
嘘…。
嘘…。
そこにはなんだか楽しそうにニコニコしてる、大好きな彼がいた。
これは…現実?
本当に起こってることなの?
私は、ガッと体を起こしてから固まってしまう。
「…理央」
「卒業おめでとう。紫月」
「…嘘」
本当に彼だ。
またねと手を振ったあの時から、身長も少し伸びた気がして、なんだかまた一段と。
かっこよくなっている。
「…どうして、、理央」
「どうしてって、帰ってくるって言ったでしょ?」
「…でも、今日だなんて」
「うん。びっくりさせたくて言ってないよ」
理央はそう言って、隣に座り出した。
信じられない。
まさか、理央がここにいるなんて。
「…もう、会えないんじゃないかって、ずっと…」
「…なにそれ、全然信用されてないじゃん俺」
理央はそう言ってハハハッと笑った。
この笑顔。
変わってない。
嬉しくて、また目頭が熱くなる。
「…どうして、最近、連絡なかったの?」
「あぁ、ごめんね。卒業式に間に合わせたかったから、そのために仕事を早めに終わらせようって思って…結構頑張っちゃってた」
「…そう、、だったんだ」
「みんな、元気にしてる?」
「うん。山岡くんと玲奈は相変わらず楽しそうだし、赤羽くんも心も元気だよ」
「そっか。あ、兄貴と園子ちゃんは?」
そうだ。
理央のお兄さんの理汰さんは、ちゃんと自立することを決めて、アメリカには行かず、ここでアパートを借りて仕事を見つけて頑張っている。
そんな理汰さんのアパートに園子は最近よく出入りしてるみたいだけど、本人のニヤついた顔を見る限りうまくいっているんだと思う。