一匹少女が落ちるまで
「…理央のバカ」
小さくそう呟いた時、
私の顎が、理央の細くて綺麗な指でクイッと持ち上げられて。
理央は私のメガネをもう1つの手で外すと。
少し口角を上げてから顔を近づけた。
理央の顔がだんだん近くなって、もうあと数ミリのところで、私も目を瞑る。
もう心臓なんてうるさくて、、
だけど関係ないくらい、ずっと欲していた理央がそこにいるから。
そして────
私たちの唇は静かに重なり合った。
久しぶりのそのキスは、離れることを知らなくて。
私だけじゃないって言うのが伝わって。
恥ずかしくて
なんだか泣きそうになって。
少しして、唇が離れると、
私はゆっくり目を開ける。
そこには、トロンとした目で私をみてる彼がいて。
そんな彼は私に目を合わせると、
ニコッと優しい笑顔を向けて、口を開いた。
「…キュンとした?」
ずっと前、彼と初めて出会ったあの頃を思い出す。
あの時の気持ちとは全く正反対で。
同じ行為をしたはずなのに。
気持ちがあるのとないのではこんなにも違うなんて。
それでも私は、、
なんだか一枚うわてな理央に対抗して悔しくて
「…別になんとも思いませんでした」
なんて、
見え透いた嘘をついたんだ。
───END────