一匹少女が落ちるまで
なんでだよ。
相手はあの雨宮紫月だぞ?
頭ではありえないと思っているのに。
今のこの心臓の音は自分でもよくわらないもので、唯一わかることは、それが紫月に対して鳴らしたものだということで。
何度かチラチラと彼女の横顔を見ても、やっぱりどこにも可愛いところなんて見当たらない。
だけど。
彼女の隣がなんだか居心地が良くて。
「できるだけ、紫月の邪魔しないようにするからさ」
「……」
「居ていいかな。ここに」
そのとき紫月がどんな顔をしていたか知らないけど。
「ダメだと言っても来るでしょ、理央」
彼女のそのセリフが俺にとって暖かくて。
久しぶりに『嬉しい』と素直に喜べたんだ。