一匹少女が落ちるまで
「断ってもいいけどさー…」
少し声のトーンが低く小さくなる伊達。
こんな彼は見たことがない。
デスクに向けていた体を、回るイスごと俺に向ける。
「知ってるぞー、先生」
「知ってる…?」
伊達の唇が片方だけ軽く上に引っ張られる。
その顔に、背中がゾクゾクっとする。
「…桜庭、お前、あのことまだ親父さんに話してないんだろ?」
「…っ?!」
俺の額からは今にも汗が滴り落ちそうになり、思わず伊達から一歩後ろに下がる。