一匹少女が落ちるまで


「誰今の」

後ろから声がして振り返ると、そこには最近よく見る顔が風間先輩の背中を見ながらそう言った。


「理央…」


「珍しいね、紫月が男の人と学校でしゃべってるなんて」


「理央だって、お昼休みに1人で歩いているなんて珍しいじゃない」


初めて理央に話しかけられた時は、すごく苦手で正直関わりたくないと思っていたけれど。


あの日、バラバラになったお弁当を片付けるのを一緒に片付けてくれた日から、苦手意識は少し薄れている。



「図書室で、よく会うんです」


「…そう」

もう見えなくなった風間先輩が歩いていた廊下の先をじっと見つめたままそれだけ言う理央。


彼のその横顔にすごく違和感を感じたけれど私は「次の授業の準備があるので、私はこれで」と軽く会釈してから、急いで廊下を後にした。



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