一匹少女が落ちるまで
「紫月にも…言えない。ごめん」
言いたい。今すぐ全部話すことができればどんなに楽か。
でも、言えない。
「そうですか。まぁいいです」
「うん、ごめん」
それから、紫月はしおりを挟んで締めた本を開いて、また読書に集中した。
俺はいつも通り、そこでぼーっとするか、絵本を開いてパラパラとめくるか。
「…やっぱり」
紫月は突然口を開いて、また本を閉じた。
「聞きたいです。何があったのか」
そして、俺の顔をまたまっすぐみてそう言った。