一匹少女が落ちるまで
【side 紫月】



「ブッ…紫月めっちゃ心配てくれるじゃん」


理央は笑いながらそう言った。


さっきの表情は私がみた幻覚だったみたいに。
理央はクラスにいるときの爽やか笑顔を私に向けた。



「ちょっとからかった。こんな顔すればもう少し紫月が俺の相手してくれるかなって」



「えっ…」



「伊達に頼まれてさ。成績あげてくれるっていうし」


理央の顔は笑っているし、声だって明るい。
だけど…。



さっきから一度も私と目を合わせない。



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