一匹少女が落ちるまで
「すげぇ、嫌われてるな」
後ろから、低くて冷たい声が聞こえたかと思うと、爽やかなシトラス系の香りがフッと香った。
「…あ」
私の少し前まで歩いた声と香りの主は、私と一緒に飛ばされた教科書を拾うと、少し得意げに教科書を私の方に差し出した。
「ありがとうございます、赤羽くん」
───ギュッ
…ん?
差し出された教科書を受け取ろうと掴んだら、教科書は思いのほか強い力で握られていた。
「あの…」
「なんであんなやつといるの?」
「え?」
お互い教科書を掴んだまま、話す。