一匹少女が落ちるまで
【side 理央】
「よーし!準備運動やった奴らからペアでパス練習しろー!」
体育教師の声が体育館に響く。
体育館の真ん中に張られたネット越しから、女子たちがバレーをしているのが見える。
女子たちの大半は、キャーキャーとこちらを見て騒いでいる。
「完全に理央しか見えてないじゃん」
俺の隣にいた奴が女子たちを見てそう言った。
「ははっ、でも俺、今日見学だし」
俺は、「みんな頑張れよ〜」と心に思ってもないことを笑顔で言って、カゴからバスケットボールを取る男子の群れから離れる。
嘘が直らない。
自分で言って呆れる。
そういえば。
今日確か、赤羽は来ていたはず。
知らない間に彼は消えていた。
勉強やってくれないと…すげぇ困るんだけどな…。
俺はぼーっとそんなことを考えながら、体育館の入り口近くにある冷水機へと向かった。