一匹少女が落ちるまで

【side 理央】


「よーし!準備運動やった奴らからペアでパス練習しろー!」


体育教師の声が体育館に響く。


体育館の真ん中に張られたネット越しから、女子たちがバレーをしているのが見える。



女子たちの大半は、キャーキャーとこちらを見て騒いでいる。


「完全に理央しか見えてないじゃん」

俺の隣にいた奴が女子たちを見てそう言った。


「ははっ、でも俺、今日見学だし」


俺は、「みんな頑張れよ〜」と心に思ってもないことを笑顔で言って、カゴからバスケットボールを取る男子の群れから離れる。


嘘が直らない。

自分で言って呆れる。


そういえば。
今日確か、赤羽は来ていたはず。


知らない間に彼は消えていた。


勉強やってくれないと…すげぇ困るんだけどな…。



俺はぼーっとそんなことを考えながら、体育館の入り口近くにある冷水機へと向かった。



< 92 / 487 >

この作品をシェア

pagetop