一匹少女が落ちるまで
俺は、みんなに騒がれまいと、紫月から3メートルくらい離れて同じように体育ずわりをする。
「赤羽のことなんだけどさ…どうすれば、来てくれると思う?」
「巻き込まないでといいました」
「…ケチ」
思わず、心の声が出してしまう。
バスケットボールが跳ねる音や飛び交う掛け声で、きっと紫月には聞こえなかっただろう。
「去年…」
突然、紫月が口を開いた。
みんなの音でよく聞こえないので必死に耳をたてる。
「…何?」
「去年、一度だけ赤羽くんが女の人と話しているのを見たことがあります。クラスバッチがみどりだったので去年の卒業生だと思いますが…」
「…紫月」
正直、俺に嫌気がさしてもう関わってくれないと思っていたから、赤羽の情報を紫月から聞けるなんて驚きだ。
「…ただ…なんとなく思い出したので」