一匹少女が落ちるまで
「…ありがとう。いい情報教えてくれて」
「…別に」
とそっぽを向く紫月。
「あとそれともうひとつありがとう」
「え?」
紫月はメガネをかけていない顔で、こちらを見た。
「俺と話してくれてありがとう」
紫月の前では。
出来るだけ素でいたい。
紫月には。
俺が彼女の隣を本当に心地いいと思っていることをわかって欲しい。
「お礼を言われたからって…理央が隣にいるのは迷惑ですから」
そういう彼女の横顔が少しカッコよく見えて
俺の心臓が静かにトクンとなった。