島…君をレンタルしたいカナ
ペットショップ
あー寒い。
身も心もお財布も寒い。

なのに、この北風の吹く中、私は枯葉も舞わない街路樹の下を歩いてる。
両腕をクロスして脇にも肩にも力を込めて身を竦めながら。


いつからこうして歩いてるんだっけ。
お昼にランチを食べた後から?



(そうだ。それからだ…)


路面に並ぶ点字ブロックを見つめながらランチを共にした相手の顔を思い浮かべた。
白っぽい顔色をした人は、言いにくそうに眉根を寄せて話したんだ。




「何も聞かずに別れて欲しい」


いきなりの言葉にパスタを巻いてた手が止まった。
は?と思いながら相手の顔を見遣り、冗談?と聞き返そうとしたんだけどーー。



(待ってよ)


もしかしたら、今のは聞き間違いだったかも。
あれだけ私のことを好きだと言ってた人が、まさか「別れて欲しい」なんて言う?


正面を向いて彼を見つめた。

最初は何とも思ってなかった人が呆れるくらい何度もアタックしてきて、いろんなプレゼントやサプライズで喜ばせてくれて、こんなに好きでいてくれるなら幸せになれるのかもな…と思いだして、付き合い始めてから二年が経つ。


先週はそろそろだな…って呟いてたよね。
あれはそろそろプロポーズしようかな…の意味かと考えてたんだけど違う?





「カナ、聞いてる?」


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