島…君をレンタルしたいカナ
いつまでもレンタルしたい
就活を始めてからあっという間に日が過ぎてく。
求人情報誌は毎週買って、休みの日には職安に行き、新しい求人が来てないかを探す。


少しでも自分が出来そうだと思えば職種を選ばずに面接にも行くんだけど、世の中そんなに甘くもなくて、特技も資格もない人間はどこの企業も要らないのか…て気もしてくるほど落っこちる。


学生時代にも同じコンプレックスを感じた。
私はこの世の役にも立たない人間なのかな…って。



「はぁ〜〜」


リクルートスーツの前ボタンを外して息を吐く。
『PET HOUSE スマイル』の中は、今日もガンガンに暖房が効いてるからあったかい。


「また落ちたの?」


畳の部屋で寝転びながらいじける私に声をかけてくる島さん。
「はい」と差し出されたマグカップの中身は、甘い香りからしてココアだ。


「……ありがとう」


優しさが染みるなぁ。
いや、この優しさが怖いとも言えるか。


「カナはどんな仕事がしたいとかある?」


「別にない。給料貰えてそれなりに働ければいい」


「それじゃ受からないな」


「どうして!?」


「今、一番下の妹が同じように就活してるんだけど、企業に入って何をしたいかを具体的に言えない人間は雇わないそうだよ。
カナはそれがある?闇雲に探してても目的がない人間を雇うほど、企業にも余裕ってもんがないんじゃない?」


< 110 / 157 >

この作品をシェア

pagetop