島…君をレンタルしたいカナ
でも、付き合って一月そこらでそれ言うのかって言われそうだし、そもそも私達、この間やっとキスしたくらいのスローペースで付き合ってるワケだしね。


ボンヤリとココアの入ったカップを眺めながら、キスした時のことを思い出した。
動物園に行って、ウサギにエサをあげてる時のことーー。


私の小指が人参スティックと間違われてウサギに噛まれてしまい、滲んできた血を彼が吸い取ってくれたんだ。


「大丈夫?」と心配そうな眼差しを向けられて、弾けそうなくらい心臓が鳴って。

かぁーっと顔が熱くなるのを感じたまま「うん…」と俯いた。

島さんはそんな私のことをいつも「可愛い」と声に出して褒めるんだけど、この時は何故か顎を上に向けられていて……。


「外でそんな顔したら駄目。誰にも見せるなよ」


鋭い声で囁いて近寄ってきた途端、後頭部に手を回して唇が奪われた。

噛まれた指の方の手首を握ったまま、誰もいないのをいいことに結構長くキスしてしまった。


島さんとの初めてのキスは情熱的で、私の知る限り、とっても甘くて蕩けるようだった。


……あれ以来、思い出すと頭の芯がぼぅっとしてくるから困る。


本屋でも棚整理やレジをしながらぼうっとしてるもんだから奈緒にも揶揄われてばかりいてーー。



「カナ?」


目の前に島さんのどアップ。

もしかして私、またボンヤリとしたまま妄想に耽ってた?


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