島…君をレンタルしたいカナ
「島さんっ!」


お店に走り込んできた私を出迎えてくれたのは妹のカンナさん。


「いらっしゃーい!お兄ちゃんならいないよー」


カウンター業務をしながらそう言う。
付き合い始めて二ヶ月近くが経った今、私達の関係はすっかり家族も公認の仲になってる。


「残念。何処に行ったの?」


「んー、それがよく分からないんだー。電話がかかってきて、慌てて外に出てったきり」


「ふぅん」


「でも、中で待ってれば?そのうちきっと帰ってくるよ」


店の中を指差し、ニコッと微笑む。
カンナさんは私と一つ違いの二十六歳。
島さんとは四つ違いなんだそうだ。


「お邪魔します」


休憩室の方へ行こうとカーテンを捲った。
この間の際どい行動からこっち、何となくこの部屋に入るのを遠慮してた。

極力彼と二人きりにならない様にして、そういう雰囲気にならないように…と、気を引き締めてた。


「カナさん、適当に何でも飲んでていいよー」


お店の方からカンナさんがそう言うのが聞こえ、「うん、ありがとう」と返事したけど。

今はそれ所じゃないんだ。
この封筒の中身を早く彼に見せたい。


「ふふふっ」


やっと貰えた採用通知。
しかも、彼のアドバイス通りに受けた出版関係の会社からだ。

面接で志望動機を聞かれ、「アニマル関係の雑誌を手掛けておられるからです」と答えた。

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