島…君をレンタルしたいカナ
マズいことにムズムズしてきた鼻先から堪えきれずにクシャミが飛び出した。
当然それに気づいた彼の目がこっちを振り向き、私達は二度目の出会いを果たした。


(あ…)


鼻と口を手で覆ったままの私は、メガネの奥の瞳に見入られて口籠る。振り返った人は何も言わず、スルッと視線を外してドアの中に引っ込んだ。


ホッ…としたと言うか、やっぱり覚えられてない。
あの無様な顔を忘れられてて良かったんだから、安心するべきなんだろうけど。


だけど、何だか少しだけ寂しいような。
弱ってた時に掛けられた言葉は、少なからず私の胸に残ってたから。


(そうか…あの人、この店の店長さんなんだ…)


入って行った店の中を振り向いて見た。

ガラスのショーウインドウの向こう側には、鳥かごの様なケースが並んでる。
あの中にきっと白いオウムもいて、今日も擬音を奏で続けているんだろう。


他には何が売ってあるのか。
さっきの女の子は、ハムスターを此処で買ったみたいだったけど。



(…入ってみる?)


眺めながら少しだけ思った。
自分だけの部屋に生き物がいたら、多少は心も癒されるのかなぁ…って気がした。


でも……


(やめとこう。冷やかしなんてするもんじゃない)


飼う気もないのにお店の中に入るなんて失礼だよね。
私が気になるのは生き物じゃなくて、あの店長さんなんだから。


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