島…君をレンタルしたいカナ
中央病院へ着くと、警察車両が見えた。
タクシー運転手のおじさんが「何かあったんですかね〜」と呑気そうな声を出す。


「そこでいいから止めて。カナさん、降りるよ」


殺気立ってるカンナさんに促されるようにタクシーを降りた。
どんどん歩いてく彼女とは違い、私の足は思うように動かない。

すっかり怖気づいてて前に出て行かない。
早く歩かないといけないとは思うけど、島さんに会うのも何だか怖くてーー。


付いてこない私を振り返って、カンナさんが側に来た。


「大丈夫。お兄ちゃんが待ってるよ」


ぐっと腕を抱くようにして歩いてくれる。
その力強さにホッとして、やっと前に進んで行けた。

病院の正面玄関から中に入り、受付の窓口で問い合わせた。


「島理玖さん?外科に運ばれて行った人かしら?
その人ならまだ外科外来にいると思いますよ。結構出血も多かったらしくて…あっ、ちょっと、走らないで…!」


「カナさんっ!」


急に駆け出した私の後を追ってカンナさんが走ってくる。

再度、出血が多いと聞いた私はさっきまでの怖さも忘れ、一刻も早く島さんの側で付き添いたくて、無我夢中になり外科という文字を追ってた。


階段を使って二階に上がり、外科という二文字を探す。
廊下の一番端っこにその文字を見つけ、バタバタと足音を立てて近付いたら。



「カナ…?」


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