島…君をレンタルしたいカナ
包帯もガーゼも見た目が大きくて痛そうだよ。
イケメンなのに顔に傷作ってバカとしか言いようがない。


「前に話したことがあるだろう。ヨーコの飼い主の家庭がちょっとトラブってて、また一時的に保護を頼まれたから出向いたんだ。
そしたら、いきなりナイフを持った家人に切り付けられそうになってね」


精神疾患のある息子さんがいる家庭らしく、鬱の時は大人しいけど、躁に入ると暴れ出すんだそうだ。


「ヨーコのことを幼い頃から可愛がってたのは彼らしいんだけど、この頃は精神のコントロールが上手く効かなくて、波が激しかったらしい」


可愛がってたヨーコに手を掛けさせてはいけないとは思った母親から保護を要望された。
島さんに連絡をするよりも先に病院へ電話をすれば良かったのに。


「子供が病気だからと言って、直ぐにでも病院へ放り込みたい親なんていないだろう」


「だからって、島さんが傷を負わなくても…」


腹立ち半分、怖さ半分で呟く。
島さんは傷の方は大丈夫と笑い、出血が多く見えたのはナイフが顔を掠めたからだ、と教えてくれた。


「縫う程の傷じゃないんだ。手の傷も彼を避けた時に切った程度だから浅い」


輸血もしてないし、平気だよ…と安心させるように囁く。




「それでも……バカァ…!」


ドンと拳を胸板に打ち付けた。
私がどれほど怖かったか。
島さんは少しも分かってない。


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