島…君をレンタルしたいカナ
「島さんが死んだら…私……どうすればいいか分かんなかった……」


チョロの時のように頼もしく対応してくれる人なんて私の周りには誰も居なくなる。

お父さんの時のように、また大好きな人を一人失う。

そんなことになる程の傷じゃないと言われても、やっぱり怖かったことには違いない。

バカバカ…と言いながら拳をドンドン胸に打った。
涙が溢れて止まらなくて、聞き分けの出来ない子供みたいになってしまった。



「理玖!」


落ち着いた中年男性の声が聞こえ、泣き声が一瞬だけ止まった。

座り込んでる私の後ろから走ってくる足音が聞こえ、島さんが小声で「ヤバっ…」と呟く。


「お前何やってんだ!あれ程関わるなと言ったのに!」


怒鳴るような声の主は、すぐ側まで来ると声を抑えた。



「……この人は?」


中年女性の声もする。
私は涙に暮れたまま彼を見て、それから声のする方に振り返った。


「前から話してる付き合ってる彼女。大崎花奈さん。…カナ、俺の両親だよ」


こんなドロドロな顔で紹介されるとは思わなかった。

最悪。
なんという初対面だ。



「…は、初めまして……」


ヒクッと痙攣のように引きつる呼吸を吸いながら声を出すと、島さんに目元がよく似た女性が跪いた。


「息子が心配をかけてごめんね、カナさん」


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