島…君をレンタルしたいカナ
申し訳なさそうに小首を傾げる。頭の上からは不機嫌そうな声が響いた。


「お前がどんなに頼られても無視しておけば良かったんだよ」


お父さんはそう吐き捨て警察官の方へ向かうと、ご面倒をお掛けして申し訳ありません、と謝った。

カンナさんは彼が騒動に巻き込まれただけだと説明したけど、お父さんはそれに耳も貸さずに怒ってる。


怖い人なのかと思って唖然としてたら、お母さんの声が優しく響いてきた。


「凄く心配してたのよ。顔を切り付けられたと聞いて、『よくも俺の息子を…!』って怒り狂ってたの」


あれは去勢を張ってるだけだと言われ、島さんも「全く素直じゃないんだから」と呆れる。


父親を早くに亡くしてる私には、父の深い愛情がよく分からない。
だけど、確かに息子が切り付けられたと聞いたら、きっと亡くなった父も怒りまくったことだろう。



(……お父さんが生きてるっていいな)


ここでも実感させられて涙がまた零れ落ちた。
なかなか泣き止まない私のことを島さんはぎゅっと抱き寄せ……


「もう泣くな。そんな顔、誰にも見せたくない」


泣かせた原因は貴方なのにそれ言う!?


呆れ顔で見上げたら、人前だというのに頬にキスを落とされた。

ボッと火が付きそうなくらい顔が熱くなって、慌てて俯いた。


そんな私を彼の腕がぎゅっと抱く。
心音が聞こえてきて、生きてるんだと実感した。

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