島…君をレンタルしたいカナ
新しい仕事に早く慣れたいと思ってばかりいたから、彼の顔に付いた傷のことなんて考えもしない一週間だった。

覚えることが沢山あり過ぎて、時々、島さんのことも忘れてるような日々だった。


こんな私との約束をきっと彼は楽しみにしてた筈。

仕事のこともどう?と、色々聞きたがってたもんーーー。



「ごめんね…」


不意にそんな言葉が飛びだした。
傷を負ったのは私の責任じゃない。
だけど、島さんが思う程、私は彼を思ってなかった。


「どうして謝るんだ?昨日のことは残念だったけど仕方ないだろう。カナも新しい職場での付き合いってものがあるだろうし……まぁ、そう思ってもなかなか割り切れずにイラついてて悪かったけど」


ごめん…と謝る彼に、ううん…と首を横に振った。
彼のことを一番に考えれなかった自分も悪い。


「傷……触らせて……」


おずおずと手を伸ばすと彼が少ししゃがんでくれた。
生っぽい傷痕は、少し肉が盛り上がってる。


「この傷痕、残るの?」


「大丈夫。時間はかかるけど薄くなるって。でも、なんかヤバい人みたいだろう?これでサングラスでも掛けたら、尚更危険人物みたいに見える」


目の前で笑う彼は新しい眼鏡を掛けてる。
オウムのヨーコの家で壊れた眼鏡の代わりに買った眼鏡はグレーの縁取りだ。


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