島…君をレンタルしたいカナ
(どうやれば信じて貰える?)


フロントガラスに映る夜景を見ながら、心配性な島さんの様子を窺った。

右手のガーゼは大きくもないけど、時々傷がハンドルに当たって痛そうに振ってる。
仕事中もゴム手袋をしてるせいで指が曲げ難い…と嘆いてた。

運転代わろうか?と言ってもダメだと言うし、私って何かと信頼置けない人間なのかも……。



(まだ付き合いも浅いしね)


キスだけの関係がもう少し先に進めば別なのかな。
そうなったら、ますます彼の独占欲が強くなって困るのかな。



(困ってみたい……かも)


よそ見するな、と言われたら胸キュンしそう!
そうでなくても、今ですら結構ドッキドキなんだけど♡



「…ねぇ島さん、どうして山なの?」


何度目かの同じ質問を繰り返した。
街外れの小高い山の駐車場に停めた彼が振り向き、出れば分かるよ、と囁く。


「出ればって…」


寒いじゃない…と言いたくなったけど、私の返事も聞かないうちに、彼はさっさと車外に出てしまった。
運転席のドアが開いた瞬間、ゾクッとする程の冷気が入り込んでくる。

あの中に今から出て行くんだ…と思ったら、きゅっと肩に力が入った。

渋々ドアを開けて出てみると、出た瞬間から山の空気は地上よりも冷たい。
寒いのがニガテな私は直ぐに身体中に力が入り、ぎゅっと両脇を締めて縮こまった。



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