島…君をレンタルしたいカナ
「カナ」


島さんは車のフロントを回り込んで来る。
祈るポーズみたいになってガタガタと震えてる私の首に温かい物が触れたかと思えばーーー


「マフラー?」


「これ巻いておけば多少はあったかいだろ」


黒いマフラーは島さんの匂いがする。
いつも使ってる物らしく、わざわざ私に貸してくれたんだ。


「ありがとう」


マフラーの隙間から声を漏らすと、白い息が吹き上がる。
にっこりと笑う彼が「行こう」と言って手を差し伸べた。


その手を握って付いて行くと、駐車場の奥は展望台みたいに広がってる。
柵の向こう側には街の明かりが星屑のように散らばり、街中で見る雰囲気とはまた違ってて綺麗だ。



「キレ〜ッ!」


思わず溜め息が出る。
私の声に「うん」と同意した彼は、「上もだよ」と指差す。



「上?」


見上げれば満点の星空。
白っぽい星の数々が瞬いて、夏とはまた違ってて美しい。



「冬にしか見えない星座もあるよ」


一つ一つの星座を指差しながら教えてくれる。
その声を聞きながら、島さんはロマンチストなんだなぁ…と感心した。


小動物が好きで独占欲が強くてロマンチスト……。

少しずつ彼のことがわかるのって、何だか擽ったいような幸せ感がある。

好きだなぁ…て思う。どんな島さんも……。


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