島…君をレンタルしたいカナ
気持ちが溢れそうになって、キュゥゥン…と胸の奥が鳴り響いた。
上を向いてる彼に擦り寄り、ことん…と腕に頭を擡げた。



「カナ…?」


寒い?と聞かれ、ううん…と首を横に振る。


好き人がいるというのはいい。
安心感とか、優しさで満たされてくーー。



肩をぎゅっと抱かれて胸が鳴った。
仰ぎみると彼の顔が近寄ってきて、そのまま唇が重なった。


最初は軽く触れるように。
段々と深まって、抱き合うようにして口づけた。


ハァ…と息を吐きながら離れてく。口腔内では彼の唾液も混じって蕩けるような甘さが広がってる。



「カナ…」


見下ろす彼のことをトロンとした眼差しで見た。


このまま帰したくないと言われたい。
朝まで私のことをレンタルして欲しい。
深い関係になりたい。
心配なんて何もしなくていいと彼に教えてあげたい……。


でもーーー


「帰ろうか。流石に冷え込んできたし」


くるっと踵を返す彼には、そんな持ちは無さそう。
ガックリと項垂れて、トボトボとついて行った。



(あーん!いけずっ!)


山道を下り始める車の中で、そんなことばかりを思った。
島さんはどう思ってるのか知らないけど、直接私を家まで送り届けてくれた。





「明日なんだけどさ」


シートベルトを外そうとして手を解除ボタンに触れようとした時に彼が言い出した。


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