島…君をレンタルしたいカナ
落ち込んだ気分のまま出社したら、経理部の責任者をしてる秋元さんが「おはよう」と挨拶してくる。
新人社員の私よりも早く仕事に来てるなんて真面目な人だ。


「お早うございます。金曜日はお疲れ様でした」


「お疲れ、お疲れ。おじさんの相手ばかりで大変だったね」


自分もそのうちの一人だけど、と断り、早速だけど十時になったらお使いに行ってきて欲しい、と頼まれた。


「いいですよ。何か買いに行くんですか?」


事務の仕事をしてるよりも誰かの代わりに動いてた方が楽。

秋元さんは買い物じゃなくて…と話し、デスクの上に乗せていた本を取り上げ、くるりと体ごと椅子を回転させた。


「この写真集を本屋に持って行って欲しいんだ。既に絶版なんだけど、どうしても欲しいと言う客がいるらしくて。
出版社からこっちに直接在庫はないかと問い合わせがあって、探してみたら見つかった」


こんなに早くから来てたのはそのせいらしい。

経理部の人間なのに印刷部の人に任せず、書庫の中を漁ってたそうだ。


手渡された本を見ると、鳥の写真集だった。
鮮やかな色で印刷されていて、一羽一羽の表情も可愛く綺麗に撮れてる。


「ステキな写真集ですね」


「だろう?印刷の方も相当力入れてやったと思うんだよ。
年月が経っても、これだけ色が鮮やかに残ってるんだから」


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