島…君をレンタルしたいカナ
『PET HOUSE スマイル』の前で立ち止まったのは傘を借りた三日後。
やっと乾いた傘を手にして、ドアを開けようかと思ったけど勇気が湧かず。


「いいや、もう。このドアに引っ掛けておこう」


どうか気づいてくれますように…と願い、ドアノブに引っ掛けて逃げた。
それからまた数日が経って、私は彼を見かけた。



「ありがとうございましたー」


仕事からの帰り、店先でお客さんのことを見送っている。
この間の親子連れの時と同じように、少し憂いを含んだような眼差しを向けて。


「店長ー、心配し過ぎですよー」


店の中から女子の揶揄う様な声がして、前と同じように振り向きもせずに「わかってる」と言う。
だけど、その表情は冴えなくて、お客さんの歩いて行った方ばかりを眺めてた。



(この人…動物愛護精神が強すぎなんじゃないの?)


見つからないようにビルの隙間に隠れながら思った。
店長だからかなぁとも思うけど、それにしては気にし過ぎる。

そのうち見送ってた目線が下を向き始め、やっと諦めがついたかのように店の奥へと入って行った。

こっちはそれを見て隠してた身を乗り出し、チラチラと店の中を見つめながら素通り。


あの傘のこと気づいてるのかなぁ。
ちゃんと手元に戻ってるといいけど。


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