島…君をレンタルしたいカナ
アニマルレンタル
午後四時に仕事を上がり、いそいそと帰り支度を始める私の背中を突く人がいる。


「なぁに?今日はやけに浮かれてない?」


ニヤリと口角を上げて聞くのはパート仲間の奈緒だ。


「そう?いつも通りだけど」


シレッと嘘を吐いてみても分かるらしい。
頬の肉をビヨーンと引っ張り、「白状しなさい」と突っ込む。


「実はこれからペットショップに行くの」


「ペットショップ?何か飼うの?」


頬から手を離した奈緒は不思議そうに聞き返す。私は引っ張られた頬を摩りながら、「ううん。遊びに行くだけ」と答えた。


「ペットショップに遊びに行く?あんたいつから子供みたいな趣味が始まったの?」


「マコトと別れたショック?」と聞かれ、「まさか」と呆れるように言い返した。


「実はいい感じの人が店長でぇー」


エヘヘ…と笑って見せると、奈緒は「ほぉほぉ」と頷いてくる。


「メガネかけてるんだけどイケメンっぽくて、何より声がステキなの!低音ボイスでちょっとハスキーで耳に残って言い方も大人で優しくって……」


ふわん…と浮かんでくる店長さんの顔を想像する度に顔がニヤける。
ヘラ〜としてくる私を肘で突き、「ちょっとー」と声をかけられた。


「カナ、あんたの目、ハート型になってない?」


マンガみたいだと揶揄われ、なる訳ないじゃん!と笑い飛ばしたけど。


< 20 / 157 >

この作品をシェア

pagetop