島…君をレンタルしたいカナ
そう思うと声もかけづらくて迷った。
こっちを向け、こっちを向け…と念みたいなものを送ってしまう。

そのうち俯き加減になった姿勢を確かめ、彼が振り向くみたいだと気づいた。


(キャー、いよいよ!?)


ドッキン、ドッキン、と胸が大きく弾む。
これってやっぱり恋!?そうでなければ何!?


スニーカーの踵を返した人が、黒縁メガネの奥の視線を下から前に向ける。
真っ直ぐ前に立ってる私に気づき、「やぁ」と明るい表情を見せた。


(もう今、死んでもいいかも!)


ぶっ飛んだ思考を何とか抑え込み、「こんにちは」と挨拶してから頭を下げた。


「いっらしゃいませ」


口角を上げた人がやって来る。
(いや〜ん、ステキ〜!)という気持ちは声にも表情にも出さず、クールに微笑んで見せた。


「今日も盛況ですね」


目線が重なり合うのが恥ずかしくて、キョロキョロと周りを見ながら話した。
店長さんも「うん、そうなんだ」と言いながら、満更でも無さそうな表情をしてる。


「遊びに来たの?だったらゆっくり見て行って」


忙しそうな人は、そう言うと直ぐにレジカウンターへ向かおうとする。
やっと会えたというのに素っ気ない。
まだ行かないで〜!と思う気持ちで彼に話しかけた。


「あ…あの、私、ペットレンタルをしたいんですが…」


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