島…君をレンタルしたいカナ
女子店員がカウンターから声をかけてきた。
チッ…と思いながらも、少しだけ安心して息を吐く。


「はーい、わかったー」


ハスキーな低音ボイスが響き、その声を聞いただけで胸がキュン…としてしまう。
「島店長」と呼ばれた彼は私を見直して「ゆっくり考えて決めたら言ってきて」と伝えて逃げた。


(島さん…。あの人の名前、島さんって言うんだ…)


名前がわかってラッキー。
だけど、問題には直面したままだ。
今日はこのまま逃げ去った方がいいのかな。
お母さん達にもペットレンタルの話はしてないんだし。

急に連れ帰ったら怒られそうだ。一人で面倒見れば?と言われても困る。


(でも、今「決めたら言ってきて」と言われたばかりで逃げるのも癪だなぁ……)


一体どうしたいんだと自分に問いかけながら立ち竦んだ。

何であんな口から出まかせを言ってしまったんだろうか。
呼び止めたいからにして浅はか過ぎる。

出入り口に向かってた足を店内に向け直して前を見ると、カウンターでは島店長さんがお客さん達の相手をしてる。

鳥の鳴き声や人の声で、あの大好きな低音ボイスは聞こえてこない。

間近でもっと彼と話してみたいし、あのオウムはどうして今日はいないのかも知りたい。

それには、とにかく何かをレンタルしないとダメだ。
そうでなければ、彼と話すチャンスにも恵まれない……。


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