島…君をレンタルしたいカナ
「その時はこの店に連絡してきて。それから、これも渡しておくよ」


黒いエプロンの下に着てるデニムシャツに手を突っ込み、胸のポケットから四角い紙切れを取り出した。


「俺の名刺。何か困ったことがあったら連絡してきて下さい」


差し出された紙を受け取り、ジッと文字を目で追う。


『PET HOUSE スマイル店長 島理玖 』と印字された上に『しま としき』と手書きの振り仮名がされてあった。

名前の下にはケータイの番号も書かれてある。
きっとお店用の個人ケータイだと思うけど、メアドまで記載されてる。


(ラッキー!これでいつでもお話できる!)


ツイてるぞ〜〜!と胸の中でガッツポーズを取った。
それからもう一度名刺を見直し、あることに気づいた。


(この人、漢字のまま読んだらシマリクさんじゃん)


急に可笑しくなってきて、ククッと笑いを含む。
笑いのツボがわからない彼が、「何?」と首を傾げて尋ねてくる。


「…いえ、何でもないです」


ごめんなさい。と謝りながらも胸の内は可笑しい。
シマリクさんからレンタルするのがシマリスだという事実が、何だか面白くて仕方ない。


笑いを堪えながら飼育のやり方を習って店を出た。
いきなり吹いてくる寒風に驚いたリスが、慌ててケージ内の巣箱に潜った。


「ごめんね。急いで帰るから」


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