島…君をレンタルしたいカナ
「上手いか〜。チョロ〜」


賢太の無邪気な横顔を見て、ムッとするけど何処かホッとしたりもしてる。

私達二人だけの姉弟なのに、お互いにあまり会話もしないで大きくなった。

こんな至近距離で二人でしゃがみ込むこともなく、私の部屋に賢太が来ることもなく、ずっとまるで一人っ子同士みたいな感覚でいたんだ。

でも……


「だから、チョロって呼ばないで」


「でも、チョロチョロ動いてて可愛いもん、こいつ」


秀才の賢太から「可愛い」ってセリフを聞くとは思わなかった。


やっぱりレンタルして良かったのかも。
いや、でも、その呼び名は頂けないけど。


「チョロチョロとか言うのも止めて。この子メスなんだから」


見てて飽きないかも…と思って元気のいい子を選んだ。
確かに部屋があったまってきたら少しずつ元気を取り戻して動き出したけど。


「メスでもオスでもいいじゃん、チョロなら」


「チョロ言うな!」


朝から姉弟ゲンカなんてしたこともない。
やっぱりレンタルして良かった。……多分。きっとそう。



「なぁに、朝から二人とも賑やかね」


ほらー、とうとうお母さんまで来るし。


「姉ちゃんがチョロと呼ぶなって言うんだよ」


「あら、いいじゃない。チョロチョロしてて可愛いリスだもん」


お母さんまで同じこと言ってるー。


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