島…君をレンタルしたいカナ
だけど、病気になって入退院を繰り返してるうちに母が一緒でなくなり、私と賢太の二人だけの時が増えて、そのうち受験勉強で夜更かしの増えた賢太が朝起きれなくなって、私が大学に入って朝御飯を食べなくなってーーー


賢太が大学に入学した頃から再び母が、きちんと朝食を食べなさい…と言うようになって、二人だけは毎朝食べて出かけてたんだけど、私は仕事も遅いから食べないことが続いてて……。



(……お味噌汁ってこんな美味しかったんだ……)


今更のように母の味だなぁ…って実感をしてる自分にも予想外。
シマリスをレンタルして帰ったことで、こんなにも予想外が生まれたことも想定外。

私は家族のことを改めて知ったような感覚を覚えてる。
これまでの家庭環境は全部、自分の関わり不足だったんだろうか。



「ごちそうさま…美味しかった」


たった一言で母がこんな嬉しそうに笑う顔を見るのも久し振り。半ば泣きそうになりながら部屋へと上がって行った。



「チョロ…」


名前を付けてはいけないと言われたけど、たった一週間だけの天使に私は感謝を込めて名前を呼びたい。


「ありがとう。チョロが来てくれたから笑顔が増えたよ」


お父さんが亡くなってからずっと、私の心にも母や賢太の心にも何処か闇があったと思う。
だけど、皆それを隠して生きてきた。


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