島…君をレンタルしたいカナ
「ダメだよ、カナ。そんなに口の中いっぱいにタネを詰め込んだら」


優しい声で話しかけられた。
大きな顔が微笑んで長い指が差し込まれる。


「ほら、こんなに頬っぺたがパンパン」


ツン!と突く指先の感覚が生々しい。
何が起きたの?と思いながら目をパチパチと瞬かせた。


「可愛いね。カナ」


黒縁メガネの奥の瞳が細くなる。
どう見ても店長さんみたいだけど、私は一体何になってるの?


「身体検査しよっか」


カタン…と音がして足元を見れば、鳥かごのようなケージの隙間から手が伸びてくる。

驚いてるうちに優しく体を捕まれ外に出されると、指先が体中を撫で摩る。


「お腹は張ってないかな。手足の骨は折れてない?」


撫でるように調べだすから擽ったい。
身悶えしながら体を仰け反らせてる私って一体……


「カナ、可愛いよ…」


近付いてくる大きな顔。
唇が尖って、私の顔面に近寄る。



(キスされるぅぅぅぅう!!)



……と思ったら目が覚めた。

ドキドキ鳴ってる心臓の上に手を置き、一体今のは何!?と思う。



「……もしかして私、ケージの中に居た…?」


まるでリスか何かになってるみたいな気分だった。
一日中シマリスばかりを眺めてたせいかな。


「でも、今のは間違いなく島店長さん……?」


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