島…君をレンタルしたいカナ
二人分のパスタ代を支払い、これでお金の縁も全て切れたとばかりに外へ出たーー。




……それから延々と歩いてるんだ。
上着を着るのも忘れてたから、ぎゅっと両腕で自分の体を抱き締めたままの格好で。



「………バカみたい。服くらい着ればいいのに………」


我に返ると自分のやってることがバカバカしく感じる。

収入も少ないのに二人分のパスタ代を支払ったから、手持ちの現金はわずか数百円になった。


(だけど、もうこれ以上あんな人のお金に頼りたくない……)


苦しい時は食事を奢ってもらったり、欲しいなぁ…と思う物も彼に強請れば買って貰えたりした。

その代わり私は彼の部屋を掃除したり、あまり上手くもないけどお料理をして頑張った。

エッチの時にも気を遣って、なるべくマグロにだけはなるまいと思ってたのに。



(私なりに努力はしてたつもりなのに……全然伝わってなかったの……)


酷い話だと思えば、涙が途切れることもなく零れ落ちる。

歪んだ視界の中を顔を上げることもできずに、ただひたすらオレンジ色の点字ブロックを見つめながら歩いた。




「ギギギギ……!」


耳障りな擬音が鼓膜を刺すのが聞こえて振り返った。

金属機器でも捩込む音かと思ったら、鳥カゴに入ったオウムの鳴き声だった。


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