島…君をレンタルしたいカナ
仕様がないな…と床に敷き詰めてある紙を片付ける。
賢太が山の様に作ってくれた床材を新たに敷き直し、水入れの水も替えてやった。

出てくるかな…と思い、リンゴも置いてみたけど出てこない。
「チョロやーい」と叫ぶとまるで日本昔話のナレーターのようだ。


(仕様がないな…)


コタツに潜り込んでペラペラと雑誌のページを捲って読んだ。
そのうちウトウトとしたらしく、また変な夢を見てしまった。




「カナ」


ハスキーボイスが優しい呼び方で名前を呼んでくれる。
「はい!」と返事したつもりなのに、「キキッ」と変な声でーー。


「また口の中いっぱいだね」


「ほら、タネは少しづつ齧って」


「こうやって縦長に掴むんだよ。そう、上手だね」


頭から背中越しに撫でられる。
擽ったくて目を閉じてると、「カナ…」と更にウットリした声が聞こえ、憧れの人の顔がどアップで近づいて来る。


(今度こそ、キスされるぅぅぅぅう!)


ガツン!と足のスネを思いきりぶつけた。
まともに骨を打ったらしく、痛みと驚きで起き上がった。


「イタタ…」


思わず抱え込んで痛みを堪える。

残念!また妄想夢か。


これはやっぱり欲求不満なんだろうか。
店長さんと会えないという寂しさがこんな妄想夢を生むワケ……!?


(だとしたら変でしょ。私…)


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