島…君をレンタルしたいカナ
塩っぱい現実
私の父はとても家族思いな人だった。
母のことが大好きで、私のことも賢太のことも可愛がってくれた。

いつも仕事よりも家族を優先してくれた。

だけど、オフィスでは付き合いが悪い人だったらしく、葬儀に来た人達もアッサリした対応だった。


ガンを患ってからは入退院を繰り返してばかりいたから、オフィスには何かと迷惑をかけてたんだろうと思う。

それは父のせいではなく、病気のせいだったんだけど……。



「迷惑かけた上に亡くなるなんてね…」


通夜の席で陰口を叩いてる人達がいた。
父の下で働いてた部下の人らしく、仕事のフォローばかりをさせられてたみたいだった。


「気の毒とは思うけど、こんな結果になるのなら早く仕事を辞めて養生してくれれば良かったのに」


何も知らない人達はそう言った。

父は父なりに、私達子供の教育費のことや家計のことを気にして働き続けてたのに。


吐き気があっても平気な顔で頑張ってた。
疼痛で動けない時も体にムチを打つような気構えで出勤してた。


それなのに、自分達の苦労ばかりを語って、父の人となりを何も見てくれようとはしない。


あんなにいい父だったのに。
愛妻家で子煩悩で頑張り屋な人だったのに………。



何も知らない人達は涙も流さずに父を見送り、私達はその何倍もの悔し涙を流して見送った。


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