島…君をレンタルしたいカナ
父の話をすれば悲しくなってしまうから、三人ともが話をしなくなった。

会話の中心にはいつも父が居て、家族が集まる時はいつもそこに笑顔が溢れてた。


父が笑うから皆が笑った。

家の中にいたムードメーカーが消えてしまい、家族の中から笑顔が消えた。

母も私も賢太も、皆泣かないように過ごすので精一杯だった。

集まるとそこに父の存在がないのがツラくて、私は特に父が大好きだったから、食卓を囲むのが何だか少し怖くもあった。

朝御飯を食べずにずっといたのも、その塩っぱい現実を思い出すのが嫌だったせいもある。


だけど、チョロが来たことでまたあの楽しかった日々が少しだけ戻った様な気がした。
チョロの存在が父とダブってたんだ。


なのに。



ポタン、ポタン…と手の上に落ちてくる水。

涙だと直ぐに気づいて拭った。


私が泣いてたってチョロが元気になるワケじゃない。
ここは少しでも早く適切な処置を取って、そしてもう二度と無謀なペットレンタルはしないことだ。


シチューの具材を炒めて水を入れた。
煮込み始めてスマホを見たけど、島店長さんからは何も入ってきてない。


心配になって部屋へ上がり、チョロのケージ内を見たけど相変わらず。


このまま命が絶えることのないように、と願いたい。
出来ればすこしでもいいから動いて。
鼻先だけでもいいから覗かせて。


「チョロ!チョロ!!」


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