島…君をレンタルしたいカナ
母にチョロの様子が変だからペットショップに連れて行く、とメールを打った。

それから返事も待たずにチョロを巣箱から取り出し、マフラーでグルグルと体を巻いた。

冷やしてはいけないと思い、そのままバスタオルを敷いた夏用の籐カゴの中に入れて外へ出た。

家の近くにある駅まで行ったらタクシーがいると思ったのに、朝からの雪のせいで全車両が出払っていると言われた。


「とっても急いでるんです!一台回して貰えませんか!?」


必死になってお願いしても、こればかりは順番だしね…と言われてしまう。


「だけど、チョロが…」


私のせいでチョロが死ぬかも。
私のせいで、生きてる命が危うい。


どうすればいいの。
誰か助けて。


(お願いーー!)


お父さんと同じように見送りたくないよ。
あんなツラい思いは二度としたくない。


ぎゅっと籐カゴを胸の前で抱きしめた。


私の体温を分けてあげる。
だからチョロ、もう少しだけ頑張ってーーー。




プープー!とクラクションが成って顔を上げた。
一台のタクシーが現れて、その助手席の窓が開いた。


「無線で聞いたよ。急いでるんだろう。早くお乗り」


いつも駅にいるタクシー会社とは違う。
個人タクシーみたいで、近くを流してたんだ…と教えてくれた。


「……はいっ!ありがとうございますっ!」

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