島…君をレンタルしたいカナ
「とにかく折角あったかい物入れたんだからお互い美味しいうちに飲もうよ。それから家まで送って行ってあげる」


ハスキーボイスでそう言い、振り返りながら私の顔を見て微笑んだ。声だけじゃなく、その笑顔にも胸がきゅん…と鳴った。


ドキンドキン…と小さく弾む鼓動を聞きながら頷き、彼が淹れてくれたカフェラテを静かに飲んだ。

飲み終える頃には気持ちも落ち着き、ようやく話せる状態にまで戻った。



「ーー私の部屋、家の中で一番寒くて。エアコンも付いてないから朝の冷え込みが厳しくて。それで、多分チョロが…」


チョロと言ってしまい、思わずバッと口を手で塞いだ。

「チョロ?」と聞き返す彼の目と目を合わせるのも怖くて、下を向いたまま弁解した。


「すみません。母と弟が勝手に名前を付けてしまったんです。たった一週間だから身に付かないとか言って…」


またしても申し訳なくなり、ショボンと肩を落とす。
島店長さんが自分をどんな目で見てるのかが怖くて、ますます足元の床を見つめた。



「……そっか。チョロ、ね」


呟いた彼が苦笑した。

ククッと笑うのを堪える声に驚き、顔を上げてみれば……



「ありがとう」


そういきなり言われて戸惑う。
何が?と聞き返すのもヘンだけど。


「何が…ですか?」


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