島…君をレンタルしたいカナ
私の話を聞きながら島店長さんは頷いたり、時々教えたりしてくれる。

その言い方が優しくて丁寧で、ハスキーな声も印象的で、私はますます彼のことが好きになっていった。



雪が小降りになったのを見て、ようやく「帰ろうか」と彼が言いだした。

エプロンを外して革ジャンを着込んだ彼は、またいつもと別人な雰囲気でステキだった。



(島さん…)


貴方をレンタルしたいな…とは、さすがに言えないまま家の前まで送られた。



「ありがとうございます」


シートベルトを外してお礼を言うと、彼は微笑んで「いやいや」と答える。

そのままアッサリ外へ出るのも惜しいけど、他に言葉が見つからない。


「…あの、じゃあ…」


ドアのロックを解除しようと反対側を向いた。
解除した後でドアレバーを引こうとしたら、右手の甲の上に温かいものが重なった。


ビクッとして振り向くと、そこには照れた顔をした島さんがこっちを見てて。


「…良かったらまた話そう。また店にも来て。待ってるから」


きゅん…と胸が苦しい程に鳴り響き、私は目を丸くしたまま「はい…」と返事をしてた。


何かが始まったワケでもないけど、何かが少し違うような気がした。


カチャとドアを開けて外へ出るのが惜しい。
このままずっと彼と同じ空気を吸ってたい。


「気をつけて帰って下さい」


こんな言葉も言わず、同じ部屋へ行けたらいいのに。


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