島…君をレンタルしたいカナ
「うん。また」


また…って言葉がこんなに耳に届いてきたこともない。
耳に届くと言うよりも胸に刻み込まれた様な感じがした。


「はい!また!」


バカみたいに興奮しながら返事をした。

運転席の島さんは目を細め、軽く手を振って走り出した。


小さくなっていく軽自動車の後ろ姿をいつまでもずっと見送った。

明日雪が止んでパート先の書店が開いたら、仕事帰りには必ず彼の店へ寄ろう。


チョロが冬眠からめ目覚めて元気に遊んでると信じていたい。
それから、今度はもっと簡単な動物がレンタルしてみたいと願おう。
昨日見た妄想夢みたいに「カナはダメだな」と優しく彼に叱られてもみたいな……。



「いやーん、もうっ♡」


熱くなる頬を両手でサンドして家の中へ戻った。


さっき仕事から帰ったばかりだと言う母と一緒にクリームシチューをあっため直して食べ、チョロが冬眠に入ったと話すと母は、「カナの部屋にもエアコンがいるわね」と囁いた。


「電器ストーブとコタツだけじゃ寒いでしょ」


取り付けようか…と言い出し、私は少し躊躇った。



「お母さん…」


私は本腰を入れて仕事を探すよと宣言した。
エアコンは自分の給料で付けるからいい…と断った。


「でも…」


母は自分が親なのに…と思うみたい。
だけど、チョロが無事だったから私は自分の思った通りのことを形にしたいと考えた。

< 79 / 157 >

この作品をシェア

pagetop