島…君をレンタルしたいカナ
母の泣き声は今も耳の奥に残ってる。
私が賢太と一緒にコンビニに行ってたら、母が父を見送れたんだーーー。



私が行ってれば…の思いが強くて、母にはそれからずっと負い目を感じてる。

賢太にも申し訳なくて、ずっと心の奥底に二人への懺悔のような思いが引っ掛かってた。


目の前が潤んできて、今更何を考えても後戻りできないことだと思い直す。

私がやる事は泣くことじゃなく、これから先、二人に同じような思いを抱かずに生活を送ることーー。




「お待たせ」


店の片付けを終えたらしい彼が後ろから声をかけた。
溢れそうになってた涙を手の甲で払い、立ち上がりながら後ろを振り向いた。


「いいえ、ちっとも待ってません」


目一杯強がって笑った。
島店長さんは少し真顔になりながらも何も言わずに、じゃあ行こう…とエプロンを外した。

昨日と同じように軽自動車の助手席に座り、そう言えば自分がこの席に座ってもいいのかな…と思った。



「あの…」


「何?」


エンジンをかけようとしてる人が、手を止めて振り向く。
聞きたくもないけど、失恋するのなら今が最適かもしれない。


「私、助手席に座ってもいいんですか?昨日は何も考えられなかったけど、彼女とかいるんじゃ…」

「別にそんな人いないよ」


素早く答えが戻って驚いた。

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