島…君をレンタルしたいカナ
ヒーターの温風が顔に当たるせいじゃない。
島さんの何気ない言葉が、私の胸に刻まれるせいだ。


何も言えずに彼のことを見つめた。
特別な思いもない私にそんな一言をくれるなんて。


「島さんて…天然?」


ついポロッと声が漏れ、振り返った彼と目が合った。


「いえ!すみません!何でもないです!」


慌ててそっぽを向いて、何を言ってしまうんだ…と我ながら思う。
彼のペースに乗せられてる自分が妙で、顔面が余計に熱く感じる。


運転をしてた島さんは、私の声に暫く無言でいた。
発した言葉が不用意だったと少し反省でもしてるのかと思ってた。


信号待ちで車を止めた時、小さく息を吐く声が聞こえ、彼の方を振り返った。


「……変なこと言うと思うかもしれないけど、俺、前にも君に会った様な気がするんだ。…何処でだったか、ちょっと思い出せないんだけど…」


そう囁く彼に、もしかしてそれは、あの日のことでは…と思った。
あの白いオウムの入った鳥かごの前で、私が泣いてたあの日ーー。



「あ…」


そう言えばあのオウムは?
私の声に振り向く彼に、オウムのことを聞こうかと思ったけどーー


「青だ」


前を向いて車を走らせ出した彼に聞くことは出来なかった。

お互いにその後は、全く別の会話をして家に辿り着いた。


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