島…君をレンタルしたいカナ
『PET HOUSE スマイル』

元カレのマコト君と別れた日、私の心と同じ音で鳴いてたオウムのいる店の前を、あれから何度か素通りしてる。

オウムのことも、お店の中から出てきた店員のことも気になって。


あの男性店員は、「どうかなさいましたか?」と親切に声をかけてくれたのに、私はまさか「男と別れて泣いてました…」とも言えず、ダッシュでその場を走り去ってしまった。

何だよ…と、きっと呆れたに違いない。人が心配してやったのに…と思ってる筈だ。


申し訳ない気持ちと、だからと言ってお詫びする勇気もないまま十日が過ぎた。

失恋の痛手は未だに癒えない日々だけど、それでも生きていく為に仕事は休めない。


あの翌日、泣き腫らした目で仕事へ行ったものだから、同じパート社員の奈緒は、直ぐに男と別れたな…と勘付いたらしい。

休憩時間にどうしたの?と目を指差しながら声をかけてきて、泣きながらグチを零す私の話に耳を傾けてくれた。


「そんなフザけた男と別れて正解!次はもっとマトモな恋愛ができるよ!」


勇気付けてくれて、あったかいミルクティーのボトルを奢ってくれた。

弱ってる時に沁み入る人の優しさ。
ギシギシと煩く軋んでた胸の音が、キーキーくらいには減ったかも。


それでも、やっぱりまだ浮上できないでいる。
あのオウムは今も、あの擬音を発してるんだろうか。


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