島…君をレンタルしたいカナ
きゅっと握られた手を握り返すと、それを感じて彼が笑った。


キスは………



「姉ちゃん、鍋できたから食べるよー!」



残念。出来なかった……。



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豆乳鍋を四人でつついて、島さんのことを色々と伺った。
勿論あれこれと質問したのは母と賢太で、私はそれを黙って聞きながら(グッジョブ!)と二人にエールを送り続けてただけ。

それによると島さんは獣医師の資格を持ってるんだそうだ。
家族はご両親と祖父母がいて、妹さんも二人いる。
妹さんの一人は店を手伝ってるカンナさんで、もう一人の妹さんは現在大学の三年生らしい。

獣医として病院を開設するよりも、ペットハウスを経営することにした意図はーー


「命の大切さを飼う人に教えたいから」


……だそうだ。


「犬でも猫でも飽きたらアッサリ捨てる世の中で、ペットを飼うことの意味を教えたかったんです。
レンタルという形を取ったのも、実際に飼えばイヤな面もあると知って欲しかったし、命を守ることの難しさも解って欲しいと思ったから」


彼の話を聞きながら、ホントに難しいな…と考えた。
軽い気持ちでは飼ってはいけないんだ…って、イヤになるくらい身に染みた。


「小動物しか取り扱ってないのはどうして?」


ふと店の中にいる生き物のことを思い出して尋ねると、こっちを向いた彼が小さく笑って。

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