行雲流水 花に嵐
第十一章
船宿に逗留して二日。
すっかり玉乃を手懐けた片桐は、大分ここの様子を探れていた。
---あとは実際の遊女部屋だけなんだけど---
ここが最も重要なのに、なかなか上手くいかない。
玉乃は片桐の言うことは基本的に何でも聞いてくれるが、遊女部屋が見たい、ということには良い顔をしなかったのだ。
もっともまだ寝物語にさらっと聞いてみただけで、詳しく聞いたわけではない。
が、玉乃は遊女部屋に片桐をやりたくないらしく、その話には乗って来なかった。
おそらく他の女子の目に片桐を曝したくないのだろう。
何せ片桐の見た目は抜群に良いのだ。
己に自信があっても、他の女にちょっかいを出されるのは気に食わない。
---玉乃をもっと骨抜きにしてやるわ---
何なら玉乃を完全にこちら側に引き入れるつもりで、片桐はこの日、ずっと玉乃を傍に置いていた。
「ねぇ片桐様。いつまでここにいてくれるの? そのうちどっかに行っちゃう?」
これ以上何をしなくてもいいぐらい、すでに玉乃は片桐に惚れ込んでいる。
「さぁねぇ。目的を果たしたら、用はないわねぇ」
ぷかぁ、と煙管をふかせる片桐に、玉乃はがばっと抱き付いた。
「やだよ。玉乃を置いて行かないで」
「とはいっても、玉乃ちゃんはここから出られないじゃない。あたしだって玉乃ちゃんとは離れたくないのよ?」
「じゃ、ずっとここにいてよ。玉乃はもう、片桐様がいないと生きて行けない」
「こんなところにずっといるのはご免だわぁ。あたしはやっぱり、こういうのどかなところは合わないの」
素っ気なく言う片桐に、玉乃は泣きそうな顔になった。
幼い頃からずっとここで男を手玉に取って来たのだろうに、やけに必死だ。
すっかり玉乃を手懐けた片桐は、大分ここの様子を探れていた。
---あとは実際の遊女部屋だけなんだけど---
ここが最も重要なのに、なかなか上手くいかない。
玉乃は片桐の言うことは基本的に何でも聞いてくれるが、遊女部屋が見たい、ということには良い顔をしなかったのだ。
もっともまだ寝物語にさらっと聞いてみただけで、詳しく聞いたわけではない。
が、玉乃は遊女部屋に片桐をやりたくないらしく、その話には乗って来なかった。
おそらく他の女子の目に片桐を曝したくないのだろう。
何せ片桐の見た目は抜群に良いのだ。
己に自信があっても、他の女にちょっかいを出されるのは気に食わない。
---玉乃をもっと骨抜きにしてやるわ---
何なら玉乃を完全にこちら側に引き入れるつもりで、片桐はこの日、ずっと玉乃を傍に置いていた。
「ねぇ片桐様。いつまでここにいてくれるの? そのうちどっかに行っちゃう?」
これ以上何をしなくてもいいぐらい、すでに玉乃は片桐に惚れ込んでいる。
「さぁねぇ。目的を果たしたら、用はないわねぇ」
ぷかぁ、と煙管をふかせる片桐に、玉乃はがばっと抱き付いた。
「やだよ。玉乃を置いて行かないで」
「とはいっても、玉乃ちゃんはここから出られないじゃない。あたしだって玉乃ちゃんとは離れたくないのよ?」
「じゃ、ずっとここにいてよ。玉乃はもう、片桐様がいないと生きて行けない」
「こんなところにずっといるのはご免だわぁ。あたしはやっぱり、こういうのどかなところは合わないの」
素っ気なく言う片桐に、玉乃は泣きそうな顔になった。
幼い頃からずっとここで男を手玉に取って来たのだろうに、やけに必死だ。